3月9日、セミナー「今こそ平和と共生を考える」 in いくのパークを開催しました!
南北コリアと日本のともだち展大阪展が、3月1日から1カ月間、大阪国際交流センターでの開催(2月17日)に続き、いくのパークB棟2階のギャラリーと多目的室で開催されています。南北コリアと日本、中国の子どもたちが描いた絵画や大学生間の交流を通じて東アジアの平和に寄与しようと、東京では23回目、大阪では13回目。主催は南北コリアと日本のともだち展大阪展実行委員会、(公財)大阪国際交流センター、後援は大阪府教育委員会、大阪市教育委員会、(公社)日本ユネスコ協会連盟、協力はNPO法人IKUNO・多文化ふらっと等。
大阪展の関連行事として、セミナー「今こそ平和と共生を考える~対話による解決は可能か?」が、3月9日(土)に多文化ふらっと事務所で開催されました。当日会場には大学生・若者を中心に11の大学、日本、韓国、中国、ベトナム、ミャンマーなどの多様な国籍やバックグランドをもつ参加者が平和と共生について意見を交わしました。日本福祉大学国際福祉開発部の学生・留学生8名も前日からコリアタウン&いくのパークのフィールドワークに続き、同セミナーにも参加しました。
企画責任者で実行委員の宋悟さんは開催趣旨について、「ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナの紛争など世界各地で戦争や紛争が激化している。戦後自明のものとされてきた『平和』『基本的人権』『民主主義』などの普遍的価値が揺らいでいる。この絵画展は、東アジアにおける硬い国家間の対立や葛藤を、柔らかく包み込む国境を越えた市民社会の形成を目指す市民レベルの取り組みだ。危機の時代が進む中で、相互理解と対話の中に社会的連帯の契機を見出すことは可能か。ともだち展と国際協力NGOの現場の取り組みを手掛かりに考える場にしたい」と述べました。
1部の同実行委員会の事務局長である筒井由紀子さんが、これまでの活動の経緯や意義について報告しました。続いて、パレスチナのガザに対する支援活動を現地で続ける国際協力NGOの日本国際ボランティアセンター(JVC)が、現地の様子について連携するパレスチナの医師やNGOの声を交えながら報告しました。凄まじい暴力と、あらゆるものが不足するガザの惨状を前にして、JVCの現地担当者は、「この惨状の中で本当に対話による解決は可能か。イスラエルがパレスチナに対する戦争と植民地政策を止めない限り難しい」と現場から悲痛な声を伝えました。
こうした報告を受け参加者たちは、4グループに分かれグループデイスカッションを行いました。各グループの参加者たちは、この「難問」に真摯に向き合い、積極的な意見交換が行われました。「戦争が起こる前の他者への差別や抑圧の予兆を見逃さないことが重要では」。ミャンマーからの留学生は、「自分の国も内戦状態だ。戦争を止めたいが、どうすればよいか」と絞り出すように発言しました。朝鮮半島の軍事的緊張の中で兵役を経験した韓国の若者は、「戦争を肌で感じるからこそ、直接出会うこと、解決に向けた共通項を見つけることが大切だ」と語りました。
同絵画展の元代表で、日本ユネスコ連盟顧問の米田伸二さんは、友人の絵本作家、辻信一さんの絵本「ハチドリのひとしずく」を紹介しながらコメントしました。「森火事の中で、一滴ずつ水を運ぶハチドリに対して、森から逃げた動物たちが笑いながら『そんなことをして何になるのだ』と笑う。その時ハチドリは『私は、私にできることだけをするだけ』と答えた」という話だ。「深刻な人権蹂躙が繰り広げられている世界各地にあって、自分にできることを淡々とすることが重要ではないか」と静かに語りかけました。セミナー終了後には、いくのパークのグランドにある防災カマドや多目的室を活用して、夕食をともにしながら活発な交流が行われました。
個人の力ではどうしょうも対処しようのない宙づりにされたかの状態の中で、途方もない「難問」に向き合い考え、「できること」を続けることの大切さについて考える貴重な場となりました。