2020年2月16日(日)、IKUNO・多文化ふらっと主催の第2回シンポジウム「大阪市生野区×多文化共生×大学 子どもの育ちと教育を考える」が開催され、市民や行政関係者など73名が参加しました。
2020年2月16日(日)、IKUNO・多文化ふらっと主催の第2回シンポジウム「大阪市生野区×多文化共生×大学 子どもの育ちと教育を考える」が開催され、市民や行政関係者など73名が参加しました。
シンポジウムの前半では、これまでIKUNO・多文化ふらっとが取り組んできた3つのプロジェクトの進捗が報告されました。現在多文化ふらっとでは、「調査・提言」プロジェクト、「多文化イベント」プロジェクト、「拠点作り」プロジェクトの3つのプロジェクトが進行しており、それぞれが多文化ふらっとに集う市民有志によって実行されています。
「調査・提言」プロジェクトは、生野区における多文化共生のまちづくりを実施するために必要な各種の調査を行うプロジェクトです。大阪市立大学、神戸女子大学、京都造形芸術大学などのゼミ生が参加する中で、基礎的な調査が行われました。在住外国人のニーズの把握などを目的とする日本語学校の留学生らへの聞き取り調査の様子が報告されました。
「多文化イベント」プロジェクトからは、「多文化クロッシングフェス ーTATAMI TALK vol.2 遊ぶ 食べる 出会うー」を5月10日(日)、御幸森小学校で開催することが発表されました。
多文化クロッシングフェスは、多様な国籍・民族・言語などの異なる人々が出会い、また子どもから若者、高齢者まで多世代の人々が集まる場として、生野区役所の協力を得て市民主導で実施されます。多国籍・多民族の人々との交流スペースを作るほか、多国籍の飲食や物販ブース、舞台ステージ、キッズコーナーなど、多様な文化的背景や、多世代の人々の集う場所となることが強調されました。
「拠点作り」プロジェクトからは、生野区の学校跡地を活用する「IKUNO・多文化共生センター」(仮称)の設立が提案されました。地域に暮らす在住外国人への多言語による相談事業を中核に据えながら、国際交流事業、防災事業などを、収益事業による財源も確保しながら展開していく構想が示されました。また大学との連携のあり方の一つとして、中学校区における、多文化共生の教育コンソーシアムの構築も提案されました。
後半のパネルディスカッションでは、パネリストに山口洋典さん(立命館大学共通教育推進機構准教授)、岡本依子さん(シドニーオリンピック銅メダリスト)、武田緑さん(教育コーディネーター)をお招きし、森本宮仁子さん(大阪聖和保育園事務局長)のコーディネートのもと、これからの生野区におけるまちぐるみの教育・多文化共生施策のあり方について、それぞれの経験・専門領域から自由に議論が交わされました。
岡本さんは、20歳を過ぎてからアメリカでテコンドーに出会い、多様な人々が当たり前に暮らしていることや、アメリカの道場で”I can do it! (私はできる)”と掛け声をかけながら練習していたこと、”Nothing is impossible.(何も不可能じゃない)”という合言葉、自分自身に自信を持って生きている「ノリ」が、夢の持てなかった自分をテコンドーでの成功に導いてくれた、と自分自身の経験を振りかえり、子どもが自分に自信を持つこと、そして自信を持てる環境を作ることが大切と語りました。
武田緑さんは、ピースボートに乗船し、国籍や民族だけでなく日本人の中でも多様な人が集まり一緒に過ごした経験が、現在の民主的な教育に関わる活動につながっていると語りました。様々な学校現場や教員との関わりの中で、多様な子どもたちが、それぞれにあった教育を受ける権利をもち、そのための環境づくりが必須であると強調されました。沖縄のフリースクールで、教育を奪われた高齢者が学びに向かう姿を見て、学校にいづらさを感じたり傷ついた子どもたちも感じるものがある、というエピソードから、多様性のある空間・時間での学びの重要性が語られました。
山口さんは、阪神・淡路大震災にボランティアとして活動したことを自身の原点に位置づけ、これまで多様なボランティア活動などの実践について、実践者であるだけでなく研究者として関わってこられました。シンポジウムでは、研究領域であるグループダイナミクスなどの観点から、生野区で地域の子どもや在住外国人が、目的なく訪れることができ、かつ目的を持って活動し始めることもできる場所が、エンパワメントにつながるのではないかと提案。また、大学が生野区に拠点を持つことで生まれる生野区外の人々とのつながりの可能性として、「混住」、つまりいちど一緒に住む・活動することによる可能性についても語られました。
違った経歴を持つ3人のパネリストが共通して語っていたのは、多文化・多様な個人が尊重される居場所と、自信を持ってものごとに取り組める環境の必要性です。そのような子どもの育ちの場を「まちぐるみ」で創ることの意義が、改めて確認されました。
これまでに育まれてきた生野区の多文化共生の歴史を考えれば、生野区は多文化共生のまちづくりに向けた「日本一」潜在力があるまち、日本全国のまちの中で「世界」に「日本一」近いまちなのではないか。だとすれば、その潜在力をどのように活かすことができるのか。IKUNO・多文化ふらっとでは、大学との連携の可能性も含め、引き続き活動を展開していきます。