大阪・生野発! シンポ「多文化共生施策とまちづくり」を開催(1月18日)
大阪・生野発! シンポジウム「多文化共生施策とまちづくり~外国人住民との共生社会実現に向けて~」が、2026年1月18日に、対面・オンラインあわせて161名が参加するなか、いくのパーク多目的室で開催されました。主催はIKUNO・多文化ふらっと、共催は休眠預金活用事業「アウトリーチ手法による外国ルーツ住民の自立事業」の資金分配団体である(公財)日本国際交流センター(JCIE)とNPO法人ジャパン・プラットフォーム(JPF)。
【写真提供:(公財)日本国際交流センター(JCIE)】

外国人住民比率が日本の都市部で最も高く、「異和共生」を区営運営の理念に掲げる大阪市生野区。地域に暮らすより多くの外国人住民にアウトリーチし、その声を区政に反映すべく、同区で実施された「外国人住民との共生社会実現に向けた調査・施策検討」(受託団体:当法人)の調査報告が2025年10月に公表されました。
第1部では、毛受敏浩・関西国際大学客員教授による「外国人受入れ新時代の展開」をテーマにした基調講演が行われました。講演のなかで、「日本社会は、急速な人口減少局面に入る一方で、在留外国人が着実に増加しており、2040年代には外国人住民が1,000万人規模に達する」ことを強調し、今後「日本語教育の充実」、「外国ルーツ青少年の教育」、「外国人の雇用」、そして「心のグローバル化」といった社会統合のための政策が必要である、と述べました。

第2部では、生野在住の外国人住民7,000人を調査対象にした調査報告の概要が報告されました。調査報告①では、当法人理事の川端麗子・神戸女子大学准教授から「調査概要と量的調査の結果」、調査報告②では、同プロジェクトチームの卜田真一郎・大阪常磐会大学短期大学部教授から、量的調査では捉えきれない「生活実感」「語り」から課題を抽出し施策提言につなげることを目的に「質的調査」の結果が報告されました。最後にそれらの「量的・質的調査」を踏まえて、「ことば」「教育・子育て」「差別」「まちづくり」など9分野における「33の施策の柱と121の事業化案」について報告しました。

第3部では、当法人代表理事の榎井縁・藍野大学教授のコーディネーターのもと、地域、行政、外国人当事者等の立場から4人の登壇者を迎えて、ディスカッションが行われました。宋悟・当法人理事・事務局長からは、「世界や日本社会では、法の支配や国際人権にもとづく多様性・公平性・包摂性といった普遍的価値が堰き止められ、逆流している。これまでの不条理な苦痛や悲嘆のなかから国際人権が生み出されてきた。普遍的価値こそが人間の可能性を切り開いていくものであると信じたいし、胸に刻む必要がある。生野区は歴史的経緯を持つ在日の100年の歴史と経験があり、多文化共生のまちを実現していく上での得難い財産を持ち、多文化共生のフラントランナーになりえるまちである」と述べました。

川端麗子さんは、「外国人住民のまちづくりへの参画という視点から考えるとき、例えば民生委員に就くうえで国籍条項があり、外国籍はなれない。一緒にまちをつくっていきたいと思ったときに制度的な障害になっている。外国人住民のまちづくりへの参画の方法について考えていきたい」と語りました。

続いて、筋原章博・生野区長は、「提言された121の多文化共生施策は、生野区が実施していくべき生野区の事業である。今後府・市等の仕分けを行ったうえで提言の実現に向けて、多様なアクターが参加する多文化共生共創プロジェクトを展開していく。そのための中心になるパートナーを選定する公募を始めた。4月からは同プロジェクトのチームを構築し、多文化共生の施策を展開していく。また区役所内に多文化共生の総合相談窓口を設置するとともに、区役所内の各課に多文化共生のカウンセラーのような役割を決め、より横断的で効率的な施策展開の仕組みを作る」ことを明らかにしました。

オチャンテ・ロサ・村井・メルセデス・桃山学院大学准教授は、「外国ルーツの子どもたちが日本で自信をもって生きていくには、母語・母文化を学びながら自分自身をエンパワメントしていくことが不可欠だ。地域社会では、まだまだ外国人住民や多文化共生についての認識は不十分であり、英語を学ぶことが共生施策だと考えている場合もあるぐらいだ。外国ルーツの子どもたちのキャリアを考えるときには、インフォーマルな居場所が重要であり、小さい時から安心してキャリアや日本社会の仕組みなどについて知り、学ぶことができる多様な機会をつくることが大切である。」と述べました。

この日のシンポジウムは講演、調査報告、ディスカッションと豊富な内容の取り組みになり、登壇者の「熱量」も感じられる有意義なシンポジウムとなりました。終了後のアンケート結果では、当日の参加者からも以下のような高い評価の声が上がりました。
<感想>
・生野区が区政として取り組んでいる具体的な内容や今後の展望を知ることができて、住民として学びがあり、また、今後地域に住むものとして何らかの形で関わりたいと思いました。
・行政ではなく「現場のNPO」が主体となって大規模な調査(量的・質的)を行い、それに基づく政策提言を行政(区長)が「実施する」と明言されたプロセスに、強い感銘を受けました。「現場の声」が、行政を動かすための「データ」と「論理」に翻訳され、実際の施策として社会実装されていく様子は、まさに民主主義と協働の理想的なモデルだと感じました。
・学術的なお話と実際の生野区の取り組みについて織り交ぜてお話くださり、分かりやすく勉強になりました。
・日本における多文化共生施策の最前線の実情を知れたと同時に、現在取り組んでいる研究や市民活動の方向性の位置づけを確認することができました。
・胸が熱くなるような内容とやり取りに、オンラインでも配信していただけて大変ありがたかったです。とても情報量が多かったので、できれば録画された動画をもう一度見られるようにしていただけると嬉しいです。膨大な調査と分析、提言へのご尽力に敬意を表します。ありがとうございました。他